
Day Surgery Column
鼠径ヘルニアの日帰り手術について
日帰り手術コラム
鼠径ヘルニアの日帰り手術について
鼠径ヘルニアは、多くの症例において入院せずに治療することが可能です。これを「日帰り手術」と呼びます。日帰り手術が実現可能になった主な理由は以下の通りです。
日帰り手術が可能な理由
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手術技術の進歩(低侵襲手術の普及)
- メッシュの導入:
従来、ヘルニアの欠損部を自己組織の縫合によって閉鎖する方法が主流でしたが、再発率が高く、術後の疼痛も強い傾向がありました。現在では、人工素材であるメッシュ(網状補強材)を用いて欠損部を補強する方法が一般的です。この方法は組織への張力が軽減されるため、術後の疼痛が緩和され、早期回復に寄与します。
- 腹腔鏡手術(内視鏡手術)の普及:
従来の開腹手術と比較して、小切開(通常は数ヶ所、特に臍部など)での手術が可能となりました。これにより、身体への負担が大幅に軽減され、術後の疼痛が少なく、回復が早まるため、日帰りでの退院が可能となります。
- メッシュの導入:
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麻酔技術の進歩
局所麻酔や硬膜外麻酔など、手術後早期に歩行などの活動が可能な麻酔方法が発展しました。これにより、手術終了後短時間で自宅へ帰宅できるようになりました。
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術後管理の簡便化
手術方法の進歩により、術後の疼痛や合併症のリスクが低減され、特別な医療的ケアが不要なケースが増加しました。自宅での安静臥床で十分に回復が可能であるため、病院での長期滞在の必要性が減少しています。術後の疼痛管理も内服薬で対応可能です。
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専門クリニックの増加
鼠径ヘルニアの日帰り手術を専門とする医療機関が増加し、手術から術後フォローアップまで一貫した体制が確立されています。これにより、患者は安心して日帰り手術を選択できるようになりました。
日帰り手術の対象とならない場合
ただし、全ての症例が日帰り手術の対象となるわけではありません。以下のような状況では、入院での手術が必要となる場合があります。
- 嵌頓(かんとん)状態:
ヘルニア内容(腸管など)が嵌頓し、還納不能となり血流障害を伴う緊急性の高い状態です。この場合は緊急入院および緊急手術が必要です。
- 再発ヘルニア:
過去に手術歴があり再発した場合、手術の難易度が高くなるため入院が必要となることがあります。
- 重度の合併症や既往歴:
重度の心疾患、呼吸器疾患、糖尿病、凝固異常など、全身麻酔や術後管理にリスクを伴う疾患がある場合、安全を考慮し入院での手術が選択されます。
- 高度肥満:
手術の難易度が増すため、入院が必要となる場合があります。
- 遠方からの通院:
術後合併症発生時に速やかな受診が困難な場合、入院が推奨されることがあります。
- 患者の希望:
自宅での安静環境が整わないなど、患者自身の希望により入院を選択するケースもあります。
結論
鼠径ヘルニアは、医療技術の進歩により、多くの症例で身体的負担の少ない日帰り手術での治療が可能となっています。しかし、患者個々の状態によっては入院が必要となる場合もあるため、まずは専門医を受診し、ご自身の状態に最適な治療法について相談することが重要です。
ご不明な点やご不安なことがございましたら、お気軽に当院スタッフにご相談ください。
鼠径部ヘルニアの治療は、なんば坂本外科クリニックまでお気軽にご相談ください。
なんば坂本外科クリニック
院長 坂本一喜
略歴
1990年 大阪府立三国丘高校 卒業
1996年 奈良県立医科大学 卒業
岸和田徳洲会病院 入職
1999年2月 屋久島徳洲会病院 離島勤務
1999年5月 岸和田徳洲会病院 外科
2006年9月 岸和田徳洲会病院 外科医長
2010年2月 岸和田徳洲会病院 内視鏡外科部長
2013年10月 岸和田徳洲会病院 外科統括部長
2015年1月 なんば坂本外科クリニック開設