
Day Surgery Column
鼠径部切開法 vs TEP法
日帰り手術コラム
鼠径ヘルニア日帰り手術:鼠径部切開法 vs TEP法
鼠径ヘルニア日帰り手術において、主に選択肢となるのは**鼠径部切開法(Lichtenstein法など)と腹腔鏡下ヘルニア修復術(TEP法)**です。どちらの手術法も、脱出した臓器を腹腔内に戻し、弱くなった筋膜を人工のメッシュで補強するという基本的な目的は同じですが、アプローチや特徴が異なります。
鼠径部切開法(Lichtenstein法など)
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手術方法:
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ヘルニアのある鼠径部を3〜5cm程度切開します。皮膚を切開し、ヘルニア嚢(脱出した臓器を包む袋)を確認します。ヘルニア嚢を処理し、人工のメッシュを筋膜の上に縫い付けて補強します。最後に皮膚を縫合して終了です。
メリット:
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歴史が長く、最も標準的な術式: 多くの症例実績があり、確立された安全な手術法です。
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局所麻酔での手術が可能: 全身麻酔が困難な患者さんでも手術が受けやすい場合があります。
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再発率が低い: 0.5〜1%と非常に低い再発率が報告されています。
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手術時間が短い: 一般的に30〜60分程度で終了します。
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費用が比較的安い: 腹腔鏡手術に比べて医療機器が少なくて済むため、費用が抑えられます。
デメリット:
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術後の痛みが比較的強い: 鼠径部を直接切開するため、術後数日間は痛みが続くことがあります。
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傷跡が残る: 3〜5cmの傷跡が残ります。
腹腔鏡下ヘルニア修復術(TEP法)
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手術方法:
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おへそ周辺に5mm程度の小さな切開を3箇所作ります。
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切開からカメラと手術器具を挿入し、皮膚と腹膜の間(腹壁の層内)で手術を行います。
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腹膜の外側からヘルニアの原因となっている弱い部分を確認し、人工のメッシュで内側から補強します。
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最後に切開部を縫合して終了です。
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メリット:
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術後の痛みが少ない: 切開が小さいため、術後の痛みが少なく、早期の社会復帰が可能です。
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傷跡が目立たない: 5mm程度の小さな傷が3箇所できるだけなので、美容面で優れています。
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両側ヘルニアの同時手術が可能: 腹腔鏡で広範囲を確認できるため、反対側にもヘルニアがある場合、同時に手術できます。
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再発ヘルニアに有効: 以前に鼠径部切開法で手術した再発ヘルニアに対して、別の層からアプローチできるため有効です。
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デメリット:
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全身麻酔が必要: 必ず全身麻酔で手術を行います。
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習熟した医師が必要: 高度な技術が必要なため、腹腔鏡手術の経験が豊富な医師が行う必要があります。
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手術時間が長くなる傾向: 切開法に比べ、手術時間がやや長くなることがあります。
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費用が比較的高い: 特殊な医療機器を使用するため、費用が高くなります。
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選択のポイント
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患者さんの状態: 全身麻酔が可能か、心肺機能に問題がないかなどが考慮されます。
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ヘルニアの種類: 片側か両側か、初めての手術か再発かによって推奨される術式が変わることがあります。
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医師の経験: 医師がどの術式を得意としているかによって、選択肢が変わる場合があります。
これらの情報を参考に、ご自身の状況や希望を医師に伝え、最適な術式を一緒に検討することが重要です。
鼠径部ヘルニアの治療は、なんば坂本外科クリニックまでお気軽にご相談ください。
なんば坂本外科クリニック
院長 坂本一喜略歴
1990年 大阪府立三国丘高校 卒業
1996年 奈良県立医科大学 卒業
岸和田徳洲会病院 入職
1999年2月 屋久島徳洲会病院 離島勤務
1999年5月 岸和田徳洲会病院 外科
2006年9月 岸和田徳洲会病院 外科医長
2010年2月 岸和田徳洲会病院 内視鏡外科部長
2013年10月 岸和田徳洲会病院 外科統括部長
2015年1月 なんば坂本外科クリニック開設 -