
Day Surgery Column
鼠径ヘルニア|術式④
日帰り手術コラム
鼠径部ヘルニアのTEP法(完全腹膜外到達法)について
当院では、鼠径部ヘルニアの治療法として、主に「TEP法(完全腹膜外到達法)」を採用しております。このページでは、TEP法とはどのような手術なのか、そのメリット・デメリット、手術の流れについてご説明いたします。
鼠径部ヘルニアとは?
鼠径部ヘルニアは、一般的に「脱腸」と呼ばれる病気で、太ももの付け根部分(鼠径部)の筋肉や筋膜が弱くなり、そこからお腹の中の臓器(主に腸)が皮膚の下に飛び出してくる状態を指します。咳やくしゃみをした時、立ち上がった時などにお腹に力を入れると、鼠径部にしこりのように膨らみが出て、横になったり手で押さえたりすると元に戻ることが多いのが特徴です。自然に治ることはなく、進行すると嵌頓(かんとん)といって飛び出した腸が戻らなくなり、緊急手術が必要になる場合もあります。
TEP法(完全腹膜外到達法)とは?
TEP法は、腹腔鏡手術の一種で、お腹の表面から「腹膜の外側」に空間を作り、そこにカメラと手術器具を挿入してヘルニアを修復する方法です。
通常、腹腔鏡手術ではお腹の中に炭酸ガスを入れてスペースを作りますが、TEP法では腹膜と筋肉の間にあるわずかな隙間を利用して手術を行います。これにより、腹腔内(お腹の中)に一切入ることなく手術が完結するため、「完全腹膜外到達法」と呼ばれています。
ヘルニアの原因となっている弱い部分に、人工のメッシュを留置し、内側から補強することで、臓器の飛び出しを防ぎます。
TEP法のメリット
・痛みが少ない: 小さな切開で手術を行うため、術後の痛みが比較的少ないとされています。
・回復が早い: 身体への負担が少ないため、早期の社会復帰や日常生活への復帰が期待できます。
・傷が目立ちにくい: 数ミリ程度の小さな傷が数ヶ所できるだけなので、美容面でのメリットも大きいです。
・内臓への影響が少ない: 腹腔内に入らないため、腸などの内臓を傷つけるリスクや、術後の腸閉塞などの合併症のリスクが低いと考えられています。
・両側ヘルニアにも対応可能: 片側だけでなく、両側にヘルニアがある場合でも、同じ切開から手術を行うことが可能です。
・再発率の低さ: ヘルニアの弱い部分を内側から広範囲に補強するため、再発率が低いとされています。
TEP法のデメリット・注意点
どのような手術にも共通することですが、TEP法にもいくつかの注意点があります。
・手術の難易度が高い: 腹膜外という限られたスペースでの手術のため、術者の高い技術と経験が必要です。
・開腹手術への移行の可能性: ごく稀に、手術中に予期せぬ事態が発生した場合や、癒着がひどい場合などには、安全のため開腹手術に移行する可能性があります。
・麻酔のリスク: 全身麻酔で行われるため、麻酔による合併症のリスクがゼロではありません。
当院は、TEP法に精通し技術認定医である院長坂本が執刀いたしますのでご安心ください。
手術の流れ
・診察・検査: 鼠径部ヘルニアの状態を診断し、手術の適応を判断します。血液検査、心電図、レントゲンなどの術前検査を行います。
・手術前日・当日: 手術前日は、医師や看護師から最終的な説明が行われます。手術当日は、飲食の制限があります。
・麻酔: 全身麻酔を行います。
・手術: 鼠径部に数ヶ所(通常3ヶ所程度)の小さな切開を加え、そこからカメラと手術器具を挿入します。腹膜外に空間を確保し、ヘルニア嚢(飛び出した臓器を包む袋)を処理します。その後、人工のメッシュを留置し、弱い部分を補強します。
・手術後: 手術後は、回復室で様子を見ます。多くの場合、術後2時間には退院が可能です。
・退院後: 医師の指示に従って、日常生活に戻ります。術後の経過観察のため、定期的に外来を受診していただきます。
よくあるご質問(FAQ)
Q: 手術時間はどのくらいですか?
A: 片側のヘルニアで約30分~1時間程度ですが、患者様の状態や両側ヘルニアの場合には変動します。
Q: 入院期間はどのくらいですか?
A: 入院は不要です。当院は、日帰り手術専門です。ただし、患者様の状態やご希望によって異なります。
Q: 手術後の生活で気をつけることはありますか?
A: 術後しばらくは激しい運動や重いものを持つことなどを控えていただく必要があります。詳細は退院時にご説明いたします。
Q: 再発の可能性はありますか?
A: TEP法は再発率が低い術式ですが、ゼロではありません。術後の生活習慣も再発防止には重要です。
ご不明な点やご不安なことがございましたら、お気軽に当院スタッフにご相談ください。
鼠径部ヘルニアの治療は、なんば坂本外科クリニックまでお気軽にご相談ください。
なんば坂本外科クリニック
院長 坂本一喜
略歴
1990年 大阪府立三国丘高校 卒業
1996年 奈良県立医科大学 卒業
岸和田徳洲会病院 入職
1999年2月 屋久島徳洲会病院 離島勤務
1999年5月 岸和田徳洲会病院 外科
2006年9月 岸和田徳洲会病院 外科医長
2010年2月 岸和田徳洲会病院 内視鏡外科部長
2013年10月 岸和田徳洲会病院 外科統括部長
2015年1月 なんば坂本外科クリニック開設