Day Surgery Column

「ただの出っ張り」と放置していませんか?

日帰り手術コラム

鼠径ヘルニアの初期症状とリスク

「最近、足の付け根が少し膨らんでいる気がする。でも、痛みはないし、横になれば引っ込むから放っておいても大丈夫だろう……」

なんば坂本外科クリニックが2015年に開院して以来、鼠径(そけい)ヘルニアの手術実績は3,100例を超えました。11年にわたる診療の中で、私たちが最も多く耳にするのがこの「様子見」の言葉です。

しかし、その「ただの出っ張り」こそが、体からの重要なサインです。今回は、専門医の視点から初期症状の見極め方と、放置することに潜む重大なリスクについて解説します。


1. 鼠径ヘルニアは「自然に治ることはない」病気です

鼠径ヘルニア(脱腸)は、お腹の壁(筋膜)に弱くなった部分や隙間ができ、そこから腸や脂肪が外に飛び出してしまう病気です。これは構造上の「穴」の問題であるため、飲み薬や運動、マッサージで治ることは決してありません。唯一の根本治療は手術のみです。

特に60代前後の現役世代の方は、仕事での踏ん張りや趣味のスポーツ、あるいは加齢による筋膜の緩みが重なり、発症しやすくなる傾向があります。「忙しいから」「入院が嫌だから」と先延ばしにしている間に、お腹の穴はじわじわと広がり、病状は進行していきます。


2. あなたは大丈夫? 初期症状のセルフチェック表

鼠径ヘルニアの初期症状は、痛みがないことも多く、非常にわかりにくいのが特徴です。以下の表で、ご自身の状態をチェックしてみてください。

シチュエーション 具体的な症状
お風呂や着替えの時 足の付け根(鼠径部)にピンポン玉のような膨らみがある。
立っている時・歩く時 夕方になると付け根が重苦しい、あるいは違和感がある。
咳をしたり重い物を持つ時 一瞬、グッと膨らみが大きくなる、または手に伝わる拍動がある。
横になって休む時 膨らみが手で押すと戻る、または自然に消えてしまう。

特に注目していただきたいのは、「横になると引っ込む」という点です。これが鼠径ヘルニアの典型的な初期症状であり、同時に「まだ大丈夫」と患者様を油断させてしまう最大の原因でもあります。


3. 放置する最大のリスク「嵌頓(かんとん)」の恐怖

鼠径ヘルニアを放置していて最も恐ろしいのが、飛び出した腸が筋肉の隙間に締め付けられ、戻らなくなってしまう「嵌頓(かんとん)」という状態です。

嵌頓が起こると、腸への血流が途絶え、わずか数時間で腸が壊死し始めます。激痛と共に嘔吐や高熱を伴い、命に関わる事態となります。この場合、もはや「日帰り手術」という選択肢は消え、緊急入院・緊急手術を余儀なくされます。場合によっては腸の切除が必要になり、社会復帰まで多大な時間と心身への負担がかかります。

3,100例以上の執刀経験を持つ私たちが強くお伝えしたいのは、「日帰り手術ができる健康なうちに治す」ことが、患者様の人生において最も賢い選択であるということです。


4. 大阪で広がる「日帰り手術」という新常識

厚生労働省のNDB(ナショナルデータベース)によると、大阪府の鼠径ヘルニアにおける外来(日帰り)手術率は、2023年度に10.2%に達しました。これは全国平均(7.0%)の約1.5倍のスピードで普及していることを示しています。

特に60代の現役世代にとって、時間は最大の資産です。

  • 2泊3日の入院に伴う仕事の中断
  • 家族への介護や家事の負担
  • 慣れない病院生活によるストレス

これらをすべて解消できるのが日帰り手術です。当院は「日本短期滞在外科手術研究会」の役員として、医療の質を担保しながら、この「時間を奪わない治療」の普及に努めています。


結び:違和感は「放置」ではなく「専門医へ相談」を

鼠径ヘルニアは、早期に発見し、計画的に手術を行えば、非常に安全に日帰りで治療できる病気です。「ただの出っ張り」を「ただの過去の話」にするために。

少しでも「おかしいな」と感じたら、迷わずなんば坂本外科クリニックへご相談ください。11年の実績と専門技術で、あなたの健やかな毎日への最短距離をサポートいたします。

次回予告

第2回は、当院の最大の特徴である「術式の使い分け(リヒテンシュタイン法とTEP法)」について解説します。なぜ両方の術式に精通していることが患者様の安心に繋がるのか、その理由に迫ります。

院長 坂本一喜

なんば坂本外科クリニック
院長 坂本 一喜

【略歴】

  • 1990年 大阪府立三国丘高校 卒業
  • 1996年 奈良県立医科大学 卒業
  • 岸和田徳洲会病院 入職
  • 1999年 屋久島徳洲会病院 離島勤務
  • 2010年 岸和田徳洲会病院 内視鏡外科部長
  • 2013年 岸和田徳洲会病院 外科統括部長
  • 2015年 なんば坂本外科クリニック 開設

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